空き家の強制撤去

近年、空き家率が上昇する中、各地で様々な対策が講じられるようになっており、
対策の方向性として外部不経済をもたらすような空き家の撤去を促進するという方向性があります。

適用困難な既存の法律

外部不経済をもたらす空き家については、周囲の住民などから苦情の形で自治体に持ち込まれることで問題として認識されるようになることが多いです。
しかし、従来から自治体としてできることは限られており、せいぜい所有者に連絡して是正を依頼するなどのお願いをする程度でありました。

建築基準法では、既存不適格(建築された時点では適法だったが、その後の法令変更により違法となったもの)で、
著しく保安上危険または衛生上有害であるものについては、所有者に建築物の除却などの措置を命ずることができ、これを履行しない場合、強制的に撤去できるとされています。
しかし、これを適用するためには、空き家が既存不適格で、例えば、屋根材が飛散するなど著しく危険であることを証明すること必要があり、この点ではハードルが高いです。
また、除却する場合になっても、除却の範囲は必要最小限に限定されます。

この規定を適用した事例としては、例えば、老朽化から倒壊の恐れがある空き家が増えている京都市で、
口頭での改善指導に応じない所有者に対し、2010年11月に改善命令を出して撤去させた例があります。
京都市では危険な空き家に対する苦情が増えているため、最悪の場合、行政代執行も視野に入れて指導を強化しているが、このような例は全国的にも稀です。

このほか景観法では、景観地区内の既存建築物の形態意匠が良好な景観形成に著しく支障がある場合、意匠制限に適合するための措置を命ずることができます。
しかし、命ずることができるのは改築や模様替えなどであり、撤去はできません。しかも自治体は、命令によって所有者が被る負担について保証する必要があります。

京都

景観関連の条例による空き家の強制撤去

このように既存の法律では空き家の撤去を命じにくいため、空き家問題が深刻化するにつれ、独自に条例を定める自治体も出てきました。
条例で対応する場合は、景観関係や環境関係の条例で定めるケースのほか、新たに空き家対策のための条例を定めるケースがあります。
まず景観関係の条例は、自治体が条例で景観法70条の内容よりも重い規制を設けることは可能であり、廃屋と化した空き家の増加が観光地のイメージを損なうなどの懸念の強い自治体を中心に、早くから規制が設けられてきました。
環境関連の条例では、千葉県勝浦市は「勝浦市きれいで住み良い環境づくり条例」で、廃屋、雑草が著しく不適正な管理状態にある場合、指導、勧告、命令ができるとしています。
勝浦市の条例ではこのほか、勧告、命令したものについて、実態が切迫している場合には、必要限度の措置を行い、その費用を請求できるとしています。

空き家の強制撤去

このように、各自治体が独自に空き家対策を講じており、
稀なケースではあるものの、強制撤去されることもあり、場合によっては不利益を生む可能性すらあります。
そのような状態になる前に空き家をどう扱うかを考えてみてはいかがでしょうか。

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