これまでも述べてきたように、空き家の問題は、これからますます広がっていくと思います。
しかしよくよく考えてみると、その裏には、実は別の問題もあると思います。
一つは不動産をめぐるこれまでの常識です。
日本では戦後、高度経済成長の中で、土地をはじめ、不動産の価格は右肩上がりで上昇してきました。不動産を持っているというだけで、大きな利益が生まれたのです。
マイホームもまずは小さいマンションを買い、それが値上がりしたらより広い物件に買い換え、最後は広い庭つきの戸建てを購入し、そしてそれが大きな資産になりました。
多くの人が、これを日本人の典型的な成功例と見ていました。
しかしバブル崩壊後、今後は不動産価格は20年近く下がり続け、「せっかく買うなら最初から長く住める物件を」という志向が強まりました。
新築住宅では最長35年までローンが借りられますから、それこそ35年ずっと住み続けるつもりで選ぶ人が増えたのです。
このように、高度経済成長の下、不動産価格が右肩上がりであった時代でも、デフレで不動産が値下がりを続けた時代でも、不思議なことに日本人にとってのマイホームは「一生住むもの」という意識はほとんど変わりませんでした。
しかし、これからの少子高齢時代、マイホームは「一生住むもの」や「永住」と考えるのではなく、生活スタイルや家族の変化、成長に合わせて住み替えていくほうが合理的な時代になりました。
生活スタイルの変化に合わせるなら10年がひとつの目安となります。
それは結婚・出産・子どもの進学・巣立ちなどのライフイベントが10年ごとに起こるからです。
住み替えの最後はマイホームを処分し、老人ホームで過ごすことになるかもしれませんし、これからの時代、家はその時その時に最も相応しい形態(持ち家や賃貸など)で選べばいいのです。
その中で選ばれなかった住宅が空き家になるわけですが、多くの人が住宅をこのように長期スパンで考えられるようになれば、新たに家を建てる前にどうすべきかを考える習慣がつくことから、こんなに空き家が増えるという現状も長期的には変わると思います。
住宅の購入はよく考えて行わなければいけません。