今回取り上げる問題は、「老いた分譲マンション」についてです。
一般的に、マンションに使用されているコンクリートの寿命は通常であれば60年程度、良好な状態を維持管理できれば100年保つといわれていますが、配管などの内部設備は30年程度で交換する必要があると言われています。
しかし、東京カンテイの調査によると、日本で実際に建て替えを実現したマンションの平均寿命は、全国平均で33.4年となっています。
また、全国で建て替えをしたマンションは計198棟で、そのうち、築30年以上40年未満が36.5%と最も多くなっています。
つまり、日本で初期に建てられたマンションの寿命は、コンクリートの寿命から想定されているよりもかなり短く、住み続けるためには、築30~40年で建て替えが必要となる場合が多くなっているのです。
では、建て替えを視野に入れていかなければいけない築35年以上になる分譲マンションは、今どの程度あるのかを見てみると、居住されているだけで95万戸(2013年時点)です。
築30年を超える分譲マンションは、2021年には235万戸に倍増すると推計されており、平均すると、1年で約13万戸ずつ増えていくこととなります。
ちなみに、文京区にある住宅の総戸数が12.9万戸であることから、老いた分譲マンションが文京区の総住宅戸数相当分ずつ毎年増えていくということであり、この事態がどれほど深刻なのかがわかると思います。
さらに、全国の築50年を超える分譲マンションは、2016年には3万戸、2021年には18万戸、2031年には106万戸にまでなることが予測されています。
不動産の専門家である牧野知弘氏も、「2020年マンション大崩壊」と称しているように、東京オリンピック後あたりから老いたマンションが続出する可能性が指摘されており、特に大都市圏では、耐用年数を超えたマンションが急増することは確実です。
国の地震調査研究推進本部・地震調査委員会が2014年に発表した長期評価では、首都圏でマグニチュード7クラスの地震が今後30年以内に発生する確率は約70%であると予測されており、旧耐震基準の老いたマンションの多くに、全壊・半壊といった多大な被害が出る危険性もあります。
居住者の生命を守る為にも、今後急増する老いたマンションの耐震補強や適切な維持管理が極めて重要になっているのです。
老いたマンションの賃貸化
分譲マンションの区分所有者というのは、「運命共同体」です。
そのため、居住者の死後の相続問題が、管理組合による維持管理にも影響してくるという特有の問題があります。
分譲マンションの居住者が亡くなった後、相続人は相続したマンション住戸に住まなくても、固定資産税や管理費等を支払う義務が生じます。
そのため、マンション住戸を相続しても自分は住まずに賃貸にする場合も多く、実際に、老いた分譲マンションの賃貸化が増加しています。
老いた分譲マンションは、単に居住者の老いだけでなく、老いた居住者が亡くなった後の相続問題によって、「負のスパイラル」に陥りかねない不安定な存在と言えます。
そのような「負のスパイラル」に陥る前に、対策を検討してみてはいかがでしょうか。
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